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【第5回|AI社員の作り方】AI社員に渡す指示・知識・業務マニュアルを準備しよう

JAPANWAVE編集部2026年9月15日読了時間: 11分
【第5回|AI社員の作り方】AI社員に渡す指示・知識・業務マニュアルを準備しよう
目次

前回は、最初のAI社員について、担当業務や成果物、人間が確認する箇所を決めました。

今回は、その設計をもとに、AI社員が仕事を進めるための「指示・知識・業務マニュアル」を準備します。

「AIに何度お願いしても、思ったような回答が返ってこない」

そんなときは、AIの性能だけでなく、仕事に必要な情報をきちんと渡せているかを見直してみましょう。人間の新入社員と同じように、役割だけ伝えても、自社の商品や仕事の進め方まではわかりません。

この記事では、「問い合わせへの返信案を作るAI社員」を例に、何を、どのように準備すればよいかを紹介します。

1. AI社員に渡す情報は、4つに分けて考える

準備するものは、大きく分けて次の4つです。

準備するもの

役割

問い合わせ対応の例

指示書

何を任せ、どんなルールを守るかを伝える

返信案を作成する。送信はしない

知識資料

回答の根拠となる情報を渡す

商品情報、料金表、よくある質問

業務マニュアル

仕事を進める順番と判断方法を伝える

内容を分類し、資料を確認して返信案を作る

テンプレート

成果物の形式をそろえる

返信案・参照資料・確認事項の形式

「どう動くか」と「何を根拠にするか」を分けると、情報を整理しやすくなります。

たとえば、料金が変わったときは料金表を、対応手順が変わったときはマニュアルを更新します。すべてを長い指示文に詰め込むよりも、変更する場所が明確になります。

2. 指示書を作る

役割だけでなく、仕事の範囲を具体的にする

「あなたは優秀な問い合わせ担当です」という指示だけでは、何をどこまで任せるのかが曖昧です。

次の内容まで決めておきましょう。

  • 役割と目的: 誰のために、何をするのか
  • 担当業務: どこまで仕事を進めるのか
  • 守るルール: 何を根拠に、どんな表現で回答するのか
  • 人間への引き継ぎ条件: どんなときに判断を求めるのか

第4回で決めた役割や確認箇所を、AIが実行できる具体的な文章にしていくイメージです。

指示書のサンプル

あなたは、自社サービスに関する問い合わせへの返信案を作る担当です。

【目的】
顧客にわかりやすく正確に回答し、担当者の返信作成を補助する。

【担当業務】
・問い合わせ内容を整理する
・提供された資料から回答の根拠を確認する
・顧客向けの返信案を作る
・担当者が確認すべき点をまとめる

【守るルール】
・商品仕様、料金、対応条件は、提供された資料に基づいて記載する
・資料にない情報を推測で補わない
・丁寧で簡潔な日本語を使う
・値引き、返金、納期を独自に約束しない
・返信の送信は行わない

【人間に確認する場合】
・回答に必要な情報が資料にない
・資料同士で内容が食い違っている
・値引き、返金、個別の契約条件などの判断が必要

【出力】
指定のテンプレートに沿って、返信案と社内向けの確認事項を分ける。

特に大切なのは、わからないときの動き方を決めておくことです。

「不明なことは確認事項として残す」と伝えておけば、無理に回答を完成させる必要がなくなります。ただし、指示だけで誤回答を完全に防げるわけではありません。実際の成果物を確認する工程も必要です。

なお、「送信しない」と指示することと、ツールの送信権限を制限することは別です。実装時には任せる範囲に合った権限を設定します。詳しくは第7回で扱います。

3. 回答の根拠となる知識を用意する

社内では当たり前のことも、資料にする

自社の商品やサービスについて、AIが正しい情報を知っているとは限りません。業務で使う事実は、参照できる資料として用意します。

問い合わせ対応なら、次のような情報が候補になります。

資料

記載する内容

商品・サービス概要

対象者、特徴、提供範囲

料金表

金額、税込・税別、追加費用の条件

FAQ

よくある質問と承認済みの回答

対応ルール

営業時間、対応できること・できないこと

最初から社内資料をすべて集める必要はありません。今回任せる業務に必要な情報から、小さく準備しましょう。

情報の鮮度と優先順位を明確にする

古い料金表と新しい料金表が混ざっていると、どちらを使うべきか判断しにくくなります。

資料には、更新日や適用開始日を記載します。また、「料金は現行の料金表を優先する」「過去の返信例は表現の参考にする」といった使い分けも決めておきましょう。

資料名:サービス料金表
最終更新日:20XX年○月○日
適用開始日:20XX年○月○日
管理担当:サービス責任者
用途:料金に関する回答の根拠

過去のメールを参考にする場合は、当時だけの特別対応が含まれていないかも確認します。「以前こう答えた」という記録が、そのまま現在のルールになるとは限りません。

また、資料に含まれる個人情報や機密情報は、利用環境で扱える範囲を確認し、業務に不要なものを除いておきます。

4. 業務マニュアルを作る

手順は、AIが実行できる粒度で書く

知識資料がそろっていても、それをどの順番で使うかが曖昧だと、成果物にばらつきが出やすくなります。

そこで、普段自分が行っている仕事を、手順として書き出します。

問い合わせ対応なら、次のようになります。

  1. 問い合わせを整理する: 質問や要望を箇条書きにする。
  2. 関連資料を確認する: それぞれの質問について、根拠となる記載を探す。
  3. 回答できるかを判断する: 資料で回答できる内容と、人間の判断が必要な内容を分ける。
  4. 返信案を作る: 回答できる内容を、顧客に伝わる表現にまとめる。
  5. 内容を点検する: 質問への回答漏れや、根拠のない約束がないか確認する。
  6. 人間に渡す: 返信案、参照資料、確認事項をセットで提出する。

「問い合わせに適切に対応する」だけでなく、何を見て、何を判断し、何を出力するかまで具体化するのがポイントです。

例外が起きたときの対応も決める

通常の手順だけでなく、迷いやすい場面も整理しておきます。

状況

AI社員の対応

資料に回答がない

回答を作り上げず、確認事項として残す

顧客の質問が曖昧

顧客に確認するための質問案を作る

資料の内容が食い違う

決められた優先順位を確認し、解消できなければ人間に相談する

値引きや返金の依頼がある

承諾せず、依頼内容を整理して人間に渡す

AI社員の仕事は、何でも自力で解決することではありません。判断できないところを明確にして、人間につなぐことも仕事の一部です。

5. テンプレートと完成例を用意する

出力形式をそろえると、確認しやすくなる

毎回異なる形式で回答されると、人間が確認するのに時間がかかります。そこで、成果物のテンプレートを用意します。

【問い合わせの要点】
・顧客が知りたいこと、依頼していること

【顧客向けの返信案】
・顧客に送る文章の下書き

【参照した資料】
・資料名と該当する項目

【人間への確認事項】
・不足している情報
・承認や判断が必要な点
・なければ「なし」と記載

顧客向けの文章と社内向けの確認事項を分けることで、確認待ちの内容が返信文に紛れ込むのを防ぎやすくなります。

良い完成例を一つ添える

テンプレートに加えて、期待する完成例を見せると、文章の長さや丁寧さも伝えやすくなります。

たとえば、架空のFAQに「無料相談はオンラインで30分」と記載されている場合、完成例は次のようになります。

【問い合わせの要点】
・無料相談の実施方法と所要時間を知りたい

【顧客向けの返信案】
お問い合わせありがとうございます。
無料相談はオンラインで実施しており、所要時間は30分です。
ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

【参照した資料】
・FAQ「無料相談について」

【人間への確認事項】
なし

完成例は、事実の根拠となる知識資料と区別しておきましょう。例文に書かれた条件を、別の案件にもそのまま使わせないためです。

6. まずは小さなセットを作り、試して直す

ここまでの内容は、次のようなファイルに分けておくと管理しやすくなります。

ファイル名の例

内容

指示書.md

役割、担当業務、守るルール

サービス情報.md

商品概要、料金、FAQ

業務マニュアル.md

作業手順、判断基準、例外対応

返信テンプレート.md

出力形式、完成例

ファイル形式そのものよりも、内容が整理されていることが大切です。最初は一つの文書の中で、見出しを分けるだけでも構いません。

なお、フォルダに置くだけでAIが自動的にすべてを参照するわけではありません。利用するツールに合わせて、指示欄への入力や資料の添付・登録が必要です。具体的な設定は、次回の実装で扱います。

準備ができたら、まずは次の3種類の問い合わせで試してみましょう。

  • 通常の質問: 資料に回答があるもの
  • 情報不足の質問: 資料だけでは答えられないもの
  • 判断が必要な依頼: 値引きや特別対応を求めるもの

通常の質問に答えられるだけでなく、わからないことを勝手に埋めず、人間に引き継げるかも確認します。

うまくいかない場合は、何が足りなかったかを見て修正します。料金を間違えたなら知識資料、独自の約束をしたなら指示や判断手順、確認しづらい出力ならテンプレートを見直す、という具合です。

まとめ

AI社員に仕事を任せる前に、次の4つを準備しましょう。

  • 指示書: 何を任せ、どんなルールを守るか
  • 知識資料: 何を根拠に仕事を進めるか
  • 業務マニュアル: どの順番で進め、迷ったときにどうするか
  • テンプレート: どんな形で成果物を提出するか

最初から完璧なマニュアルを作る必要はありません。一つの業務に必要な情報をそろえ、試して、足りないところを直していけば大丈夫です。

AIに仕事を説明する過程は、自分の業務を整理する機会にもなります。「なんとなく自分で判断していたこと」を言葉にするところから始めてみましょう。

次回は、今回準備した指示や資料を使って、最初のAI社員を実際に作り、仕事を任せてみます。

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※ 本記事の内容は、執筆時点での情報に基づいています。最新の情報と異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。 また、記載されている内容は一般的な情報提供を目的としており、特定の状況に対する専門的なアドバイスではありません。 ご利用にあたっては、必要に応じて専門家にご相談ください。