RAGの検索方法:キーワード検索・セマンティック検索・ハイブリッド検索を徹底解説
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RAGの検索方法:キーワード検索・セマンティック検索・ハイブリッド検索を徹底解説
近年、AIチャットボットや生成AIの精度を高めるために「RAG」という仕組みが注目されています。
RAGでは、外部データを検索して参照することで、AIがより正確で文脈に沿った回答を生成できるようになります。
しかし、この「検索」の部分にはいくつかのアプローチがあり、仕組みを理解しておくことで回答精度を大きく向上させることができます。
今回は、RAGでよく使われる3つの検索アプローチ――
- キーワード検索
- セマンティック検索
- ハイブリッド検索
について、それぞれの特徴と使い分けをわかりやすく解説します。
RAGとは?
まず最初にRAGの仕組みについておさらいします。

- RAGは、AIの生成モデル(ジェネレーティブモデル)と外部情報を検索して参照することで、より正確で文脈に合った回答やコンテンツを生成する技術です。
- 通常、チャットボットに質問すると、生成AIはあらかじめ学習したデータから解答生成します。
- ただ、多くの企業は自社特有の情報を持っているためAIが自動的に適切な回答を提供することが難しい場合あります。
- そのような場合に自分の持つ情報をRAGとして登録することで、生成AIがその情報を元に回答を導き出してくれます。
- 企業内でのチャットボットなどを開発するときにRAGが有効的です。
1. キーワード検索(Keyword Search)

最も基本的な検索手法が「キーワード検索」です。
これは、ユーザーの質問文に含まれる単語を基に、同じ単語を含む文章を探すというシンプルな方法です。
仕組み
- 検索対象の文章を文字列として保存
- ユーザーの質問に含まれる単語を一致・部分一致で検索
- 出現頻度や一致度でスコアリングし、上位文書を取得
メリット
- 処理が速く、コストが低い
- 既存の検索エンジン(ElasticsearchやMySQLの全文検索)で実装しやすい
デメリット
- 同義語や言い換えに弱い
例:「車」と「自動車」が同じ意味でも別扱いになる - 文脈理解ができない
→ 「東京で有名な寺」と聞かれても「浅草寺」が出てこない場合がある
キーワード検索は、構造化されたデータや定型文書には向いていますが、自然言語ベースの検索には限界があります。
2. セマンティック検索(Semantic Search)

次に登場するのが、近年AI技術の進化で広く使われるようになった「セマンティック検索」です。
これは、単語の意味や文脈をベクトル(数値)で表し、意味の近さをもとに検索する方法です。
仕組み
- 各文書を埋め込みモデル(Embedding Model)でベクトル化
- ユーザーの質問も同様にベクトル化
- コサイン類似度(cosine similarity)などで近いものを検索
メリット
- 言い換えや表現の違いを理解できる
例:「車を買いたい」と「自動車の購入を検討中」が同義と判断される - 文脈に沿った回答が可能
→ 「日本で有名な寺」と聞くと「浅草寺」「清水寺」などを返せる
デメリット
- モデルの品質に依存
- ベクトルDB(Pinecone、Weaviate、Milvusなど)の導入コストがかかる
- 一部の専門用語や略語には弱い場合がある
セマンティック検索は、自然言語の意味理解が必要なAIチャットボットやFAQシステムに最適です。
3. ハイブリッド検索(Hybrid Search)
そして近年注目を集めているのが、「キーワード検索」と「セマンティック検索」を組み合わせたハイブリッド検索です。
仕組み
- 両方のスコアを統合して最終的な関連度を算出
- たとえば以下のように重み付けしてスコアリング:
Final Score = 0.7 × Semantic Score + 0.3 × Keyword Score
メリット
- 意味の近さとキーワード一致の両方を考慮できる
- 特殊な用語にも強く、かつ文脈も理解できる
- 検索漏れを大幅に減らせる
デメリット
- 実装がやや複雑(2種類の検索結果を統合する必要あり)
- 処理コストが高くなることがある
代表的な実装例
- OpenAI Embeddings × Elasticsearch BM25
- PineconeのHybrid Search
- WeaviateのHybrid Fusion
どの検索手法を選ぶべきか?
シーン | 最適な検索手法 |
---|---|
定型文やログ検索 | キーワード検索 |
FAQ・ナレッジ検索 | セマンティック検索 |
専門用語を含む業務知識検索 | ハイブリッド検索 |
特にRAGで「精度が低い」と感じるケースの多くは、検索フェーズでの情報取得が不十分なことが原因です。
そのため、実際のプロダクトではハイブリッド検索を採用するケースが主流になっています。
まとめ
手法 | 特徴 | 強み | 弱み |
---|---|---|---|
キーワード検索 | 単語一致 | 高速・低コスト | 意味を理解できない |
セマンティック検索 | 意味ベース | 文脈理解に強い | モデル・DBコスト |
ハイブリッド検索 | 統合型 | 精度・汎用性が高い | 実装が複雑 |
RAGの性能を最大化するためには、「どのように検索するか」こそが最も重要なポイントです。
もしあなたのAIチャットボットの回答がいまいちだと感じたら、まず検索戦略を見直してみましょう。
※ 本記事の内容は、執筆時点での情報に基づいています。最新の情報と異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。 また、記載されている内容は一般的な情報提供を目的としており、特定の状況に対する専門的なアドバイスではありません。 ご利用にあたっては、必要に応じて専門家にご相談ください。