【第3回|AI社員の作り方】AI化の優先順位を決め、導入ロードマップを作ろう

目次
前回は、普段の業務を棚卸しし、「人間がやる」「AIに補助してもらう」「AIに任せる」の3つに分類しました。
AIに任せられそうな仕事が見えてくると、「あれもこれもAI化したい」と感じるかもしれません。しかし、一度に取り組むと、準備や修正に追われてしまいます。
そこで今回は、棚卸しした業務の中から、最初にAI化する業務を一つ選び、導入ロードマップを作ります。
大切なのは、AIを導入すること自体ではなく、自分の負担を減らし、重要な仕事に使える時間を増やすことです。
すべての業務を一度にAI化しない
AIに仕事を任せるには、指示を考えたり、必要な情報を用意したり、成果物を確認したりする必要があります。
最初から複数の業務をAI化すると、どこに問題があるのか、どれくらい効果が出ているのかがわかりにくくなります。
まずは一つの業務で試し、うまくいった方法をほかの業務へ広げていきましょう。
最初のAI社員に求めるのは、何でもできることではありません。一つの仕事を安定して手伝ってくれることから始めれば十分です。
AI化の優先順位を決める3つの基準
前回の棚卸しで「AIに補助してもらう」「AIに任せる」に分類した業務を、次の3つの基準で見直します。
発生頻度
まず、その業務がどれくらいの頻度で発生するかを確認します。
- 毎日発生する
- 毎週発生する
- 毎月発生する
- 必要なときだけ発生する
繰り返し発生する業務は、一度仕組みを作ると継続的な効果が期待できます。
1回あたりの削減時間が短くても、毎日行う仕事であれば、月単位では大きな差になります。
作業時間
次に、1回あたりの作業時間と、月間の合計時間を確認します。
計算方法はシンプルです。
月間の作業時間 = 1回あたりの作業時間 × 月間の実施回数
例えば、1回30分の業務を月20回行っている場合、月間の作業時間は10時間です。
「何となく大変そう」という感覚だけでなく、実際にどれくらい時間を使っているかを見ることで、改善する価値のある業務を見つけやすくなります。
正確な時間がわからなければ、まずは概算で構いません。
AI化しやすさ
時間がかかる業務でも、すぐにAIに任せられるとは限りません。
次のような特徴がある業務は、AI化の候補として検討しやすくなります。
- 作業の手順がある程度決まっている
- 必要な情報がデータとしてそろっている
- 成果物の形式が決まっている
- 出力が正しいか、人間が確認しやすい
反対に、その場の状況に応じた判断が多い仕事や、必要な情報が整理されていない仕事は、準備に時間がかかります。
その場合は、業務全体を任せるのではなく、「情報の整理だけ」「下書きだけ」のように、任せる範囲を小さくすると取り組みやすくなります。
確認・修正時間を含めて改善効果を見積もる
AIが短時間で成果物を作れても、それだけで業務が効率化されたとは限りません。
指示や情報の準備に時間がかかったり、出力を大幅に修正したりすれば、かえって負担が増えることもあります。
AIに作らせる時間ではなく、使える成果物が完成するまでの時間で比較しましょう。
現在の作業時間を計算する
まず、現在その業務にかかっている時間を確認します。
情報を集める、文章を書く、内容を確認するなど、完了までに必要な作業を含めて考えます。
例えば、1回30分、月20回の業務であれば、現在の作業時間は月10時間です。
AI導入後の作業時間を予測する
次に、AIを使った場合に必要な時間を見積もります。
- 指示や入力情報を準備する時間
- AIの処理を待ち、ほかの仕事ができない時間
- 成果物を確認する時間
- 間違いや不足を修正する時間
例えば、これらを合わせて1回10分になれば、月20回で月3時間20分です。
なお、AIが処理している間に別の仕事ができる場合は、待ち時間と自分の作業時間を分けて考えると、負担の変化を把握しやすくなります。
月間の削減時間を算出する
導入前後の作業時間を比較すると、削減時間を見積もれます。
月間の削減時間 = 現在の月間作業時間 − AI導入後の月間作業時間
先ほどの例では、月10時間から月3時間20分になるため、月6時間40分の削減が見込めます。
ただし、これは予測です。実際に試して、確認や修正にかかった時間を測り、見積もりを更新しましょう。
また、最初の設定や準備にかかる時間、ツールの利用料金、運用後のメンテナンスも忘れずに確認します。削減時間だけでなく、必要な品質を保てるかも重要です。
AI化する業務を優先順位マップに整理する
ここまでの情報をもとに、「改善効果」と「AI化しやすさ」の2軸で業務を整理します。
発生頻度と作業時間から削減できそうな時間を見積もり、それを改善効果の目安にします。
AI化しやすい | AI化しにくい | |
|---|---|---|
改善効果が大きい | 最優先で試す | 業務を分解し、一部分から試す |
改善効果が小さい | 準備が少なければ試す | いったん後回しにする |
厳密に点数をつけなくても構いません。まずは「高・中・低」などで比較するだけでも、取り組む順番が見えてきます。
優先して取り組む業務
優先したいのは、改善効果が大きく、AI化しやすい業務です。
繰り返し発生し、手順や成果物が決まっている仕事から探してみましょう。
ただし、AI化しやすくても、間違えたときの影響が大きい業務は慎重に扱います。
最初は人間の確認を挟めるものが適しています。
小さく試してから判断する業務
改善効果は大きそうでも、AIでどこまで対応できるかわからない業務は、小さく試します。
業務全体を自動化する必要はありません。まずは一部分だけ任せて、成果物の品質や修正の手間を確認しましょう。
実際に試した結果、「思ったより使える」「修正が多く、まだ効果が小さい」と判断できれば、それも次の優先順位を決める材料になります。
人間が担当し続ける業務
重要な意思決定や、相手との信頼関係に関わる対応などは、人間が担当する部分を残します。
これは、単にAI化が難しいからではありません。責任や判断を、人間が持つべき仕事もあるためです。
AIには判断材料の整理や下書きを任せ、最終判断は自分が行う。こうした分担でも、十分に負担を減らせます。
最初にAI化する業務を一つ決める
優先順位を整理したら、最初に取り組む業務を一つ選びます。
迷ったときは、次の条件を確認してみてください。
- 定期的に発生し、試す機会がある
- 必要な情報をすぐに用意できる
- 成果物の良し悪しを自分で判断できる
- 間違えても、公開や送信の前に修正できる
- 導入前後の作業時間を比較できる
選ぶ単位は、「営業」「マーケティング」のような大きな仕事ではなく、「問い合わせへの返信案を作る」など、完了がわかる具体的な作業にします。
この段階では、使用するツールや細かな指示まで決める必要はありません。
まずは、何を最初にAI化するか、どの状態になれば成功といえるかを明確にしましょう。
AI社員の導入ロードマップを作る
最初に取り組む業務が決まったら、どの順番でAI活用を広げていくかを整理します。
各ステップには、「取り組むこと」「目安の時期」「次へ進む条件」を書いておきましょう。
時期は仮で構いません。予定どおりに進めることよりも、品質や効果を確認してから次へ進むことが大切です。

STEP1:一つの業務で試す
選んだ業務で、AIに仕事を任せてみます。
最初は人間が入力情報を渡し、成果物を一つずつ確認する形で十分です。指示や必要な情報の準備、実装方法については、第4回から第6回で具体的に扱います。
この段階では、「求める成果物が作れるか」「どこに修正が必要か」を確認します。
STEP2:効果を測定して改善する
何度か実際の業務で使い、導入前後の作業時間を比べます。
確認・修正の時間も記録し、負担が減っているかを見ていきましょう。
修正が多い場合は、指示や入力情報を見直します。必要な品質を保ちながら、繰り返し時間を削減できるようになったら、次の段階を検討します。
STEP3:関連する業務へ広げる
一つの業務が安定したら、その前後にある関連業務へ広げます。
すでに用意した情報や手順を活用できる仕事であれば、新たな準備を抑えやすくなります。
広げるときも一つずつ追加し、確認や修正の負担が増えすぎないかを確かめましょう。
STEP4:外部ツールと連携して自動化する
仕事の進め方が固まってきたら、情報の取得や成果物の保存などを外部ツールと連携します。
人間が繰り返しているコピー・貼り付けなどを減らし、作業をつなげていく段階です。
ただし、送信・公開・削除など、外部への影響がある操作は、自動化する範囲を慎重に決めます。必要な箇所には、人間の承認を残しましょう。
具体的な連携方法は、第7回で紹介します。
STEP5:複数のAI社員につなげる
複数の業務が安定してきたら、担当ごとのAI社員をつなぎます。
それぞれの成果物を次の担当へ渡せるように、引き継ぐ情報や確認箇所を整理します。
ただし、AI社員を増やすことが目的ではありません。一人のAI社員で十分に仕事が回るなら、その構成のままでも問題ありません。
必要な範囲で連携し、自分の事業に合ったAI組織へ育てていきましょう。具体的な設計は、第8回で扱います。
まとめ・次回予告:最初のAI社員を設計する
今回は、棚卸しした業務からAI化の優先順位を決め、導入ロードマップを作る方法を紹介しました。
進め方は、次のとおりです。
- 発生頻度・作業時間・AI化しやすさを確認する
- 確認や修正の時間も含めて、改善効果を見積もる
- 最初に取り組む業務を一つ選ぶ
- 小さく試し、効果を確認しながら広げる
目指すのは、すべての仕事をAIに置き換えることではありません。自分が担うべき仕事に、より多くの時間を使える状態を作ることです。
次回は、今回選んだ業務をもとに、最初のAI社員の役割と仕事を設計します。
担当業務、受け取る情報、作成する成果物、使用するツール、人間が確認する箇所を決め、実際に仕事を任せるための準備を進めていきましょう。
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